June 05, 2004 | プロ失格
おのひろきおんらいんやQyouさんのブログで青山学院大学国際政治経済学部助教授の瀬尾佳美の自転車についてのコラムが紹介されておりまして,そのコラムが結構大きな波紋を呼んでいることを最近知りました。本来これは自転車に関する内容なので「軟弱ポタリング日記」のネタなのでしょうが,ここでは敢えて「形而上日記」で別の角度から述べてみたいと思います。なぜって,このコラム,一読して「まともに反論する値なし」とぽた郎は思ってしまったからです。ではなぜ,このコラムがここまで反響を呼び,私自身もわざわざ日記でとりあげなければならないほどなのか? ここではそれを明らかにしたいと思います。
さて,今回の事件(この反響はもはや「事件」と言って良いでしょう。瀬尾の発言はその後本質的な内容から離れ,2ちゃんねるや瀬尾の個人的掲示板を舞台に中傷と記事削除の泥仕合にまで発展しているようです)の問題の本質は,実は瀬尾自身の説明足らずの提案にも粗暴な文章表現にもあるのではありません。一番の原因,ことの発端は瀬尾がその言説を(おそらくよく考えずに)自分の勤務先のサーバを利用して流布せしめたことにあるのではないかと,私は考えます。
仮にこれが,まったくの匿名の個人のホームページに掲載されたとしましょう。あるいは本名を名乗っても自分の職業的立場や所属先をあまり前面に強調せず,一個人の立場として私的なホームページで私的な意見を述べたと仮定しましょう。その場合は如何でしょうか? 多少の意見交換や言い合いはあったかも知れませんが,2ちゃんねるで取り上げられるほどの大事に発展したでしょうか? おそらくそれは言説の稚拙さから黙殺されるか,あるいは極めて小さい集団の中でひっそりと閉じられた議論が成されるのみだったのではないかと予想されます。
逆に,勤務先にも自身の発言の責任が帰するものとして,勤務先の上司や同僚,広報担当者と入念に(あるいは一応の)議論をした末に発表するという作業を仮定しましょう。その場合,おそらくは勤務先の良識的なあるいは体面的な意見から,あのような独断と偏見に満ちた表現は随分緩和され,「まともな」文章(すなわち感情的な反論を容易に誘発させないような周到に構成された文章)として発表されるのだろうと容易に予想できます。
すなわち,問題の本質はここにあります。彼女が自分の社会的地位を過剰に(あるいは不正に)利用して,あたかも公的=パブリックに,極めて私的=プライベートな言説を述べたということです。一般の常識を持ち合わせた社会人であれば,所属する会社や団体の名前を使って発言することに極めて慎重と熟慮を要することは,誰でもあたりまえのこととして認識していると思います(すくなくとも私はそのような「一般常識」を期待したいです)。私的=プライベートに発言する場合と,公的=パブリックに発言する場合では,その言葉の重みが違います。であればこそ,敢えて公的な発言の機会を最大限活用したり,敢えて私的な発言として抑制したり,と常識的な社会人は判断するわけです。(余談ですが,政治家の「失言」はこれを半ば意図的に踏み越えることに原因があるものと思われます。)問題の瀬尾の発言は,その一般社会常識が完全に欠落しています。
一般企業であれば,その会社の名の下に「公的に」流布される言説(パンフレットから書物,インタビューからホームページの記事まで)は厳格に管理されているため,構成員の私的な発言がうっかり公的なものとして(文字どおり会社のカンバンを背負って)公表されることは殆どないでしょう。大学という組織は「学問の自由な自治」という名の下に,その管理が多少ゆるいのかもしれません。まあ端的に言ってしまえばザルなだけかもしれませんが。そのような状況下においては,構成員一人一人が健全な常識と良識を持って自分自身を律して行動するほかありません。そもそも大学人は理論と言説が武器なわけですから,そのタテマエは堅持して貰いたいと思います。昨今,しょーもない大学教授の不祥事が後を断ちませんが,少なくとも大学人の「理論と言説の説明責任」というタテマエだけは,放棄しないで貰いたいものです。
ここでは瀬尾の言説の内容までは立ち入りません。2ちゃんねる等で取り扱われているように,発言者本人の人格にまでも及んで云々するつもりは毛頭ありません。直接会って話したら非常にいい人なのかもしれませんし,優秀な研究者であったり人望の厚い教育者であるのかもしれません。しかし,ここで問題としているのは,あくまで件のコラムの公表の方法とその姿勢です。公的私的を混同して自説を野方図に振り回す姿には,残念ながら愚かしいを通り越して怒りすら禁じ得ません。それが私の感想です。そしてこれは,「反論するに値なし」と思っていてもこれに反論をせざるを得ない良識的な方々の,恐らく共通の認識なのではないでしょうか。
というわけで,結論。今回の青山学院大学国際政治経済学部瀬尾佳美助教授の行為は「プロ失格」。それから,いわずもがな,青学院大学国際政治経済学部の管理責任も問われるべきでしょう。感情的議論も含めてざっくばらんに議論をしたいのなら,まずプライベートなホームページを立ち上げなさい(大学からの直リンクも当然やめること)。パブリックで冷静な議論をしたいのなら,まず自分の書いた原稿をおなじ職場の人にチェックして貰ってから載せなさい。これは社会の常識です。
私もおのさんのところで知り、遅ればせながら当該ページを読んだ口です。一読、あまりにも稚拙な論理と乱暴な文章に驚きました。しかもそれを大学の教員(あとから知った)が職場のアドレスを使って公開していることは驚愕に堪えません(こっちの方がもっとビックリ)。よくもまぁ……。
自分のブログでエントリーを立てようかとも思い、実際に文章も書きかけたのですが、非常に虚しい気持ちになってきたので途中で放り出したままです。環境学者として自転車に鉄槌を下したおつもりでしょうが、どうやら手元が狂って自分自身をぶちのめしてしまってますね。たぶんご本人はそのことに気づいていないと思われますが。
ぽた郎さんのおっしゃるところに賛同いたします。
................. by morio0101 (06/06 00:31)>実際に文章も書きかけたのですが、非常に虚しい気持ちになってきたので・・・
同感です。私も当初なんとか自転車論的反論を書こうかと思ったのですが,たまらなく虚しくなり,このような形に変更しました。おそらく,反論を考えている方も,虚しくて書くのをやめたか,虚しいけれど仕方ないから書いたか,のどちからだと思います。そういう虚しい議論をせざるを得ない文章自体も,プロとして失格ですね。
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