April 11, 2004 | イラク問題についてひとこと。
この日記を始めた時,仕事の愚痴と政治的な話はしないようにしよう,と考えた。もちろん,現実世界のぽた郎は日々あれこれいろいろとは考えているのではあるが,その考えたことをネット人格の「ぽた郎」にすべて射影しても仕方ないと考えたからだ。この考えは今でも同じではあるが,前者はともかく,後者はやはり避けて通れない,沈黙を続るわけにはいかない,という気持ちが次第に強くなってきた。というより,このご時世,政治に背を向けて安穏と形而上的な世界に引きこもっていることは出来ないし,したくないのだ。というわけで,「ぽた郎」というネット人格に「politics」というカテゴリを与えることにした。まあ,ここはあくまで「形而上日記」なので,あんまし政治的な話ばっかりにはしないように心掛けよう。
■池澤夏樹:「3人の誘拐について大急ぎで, パンドラの時代 http://www.impala.jp/pandora/index.html」
ついに,というか,やっぱり,というか,イラクで日本人民間人が誘拐され,自衛隊撤退の交換条件を突き付けられている。この記事を書いている時点ではどうやら事態は平和裡な解決に向かうようで何よりであるが,この事件はやはり「何故自衛隊なのか?」というテーゼを改めて日本市民の喉元に突き付けた形となった。イラク問題に関してはあまたの評論家が百家争鳴の態を成しているが,個人的には池澤夏樹がもっとも誠実でわかりやすく,かつ正鵠を得た論評を張っているように思われる。少し長いが引用しよう。
では、今、日本はどうすべきか?池澤の述べていることは明快である。「誘拐とは無関係に」撤退すること。誘拐事件が幸い解決に向かったことで,池澤の言説はさらに説得力を帯びて来る。確かにテロや脅迫に屈する形で政策を転換するのは最も最悪のやり方である。誘拐が解決したから自衛隊もOK。小泉政権はそう考えるに違いない。危機管理能力の欠如したあの政権ではそういう思考に走らざるを得ないことは眼に見えている。しかし,テロや誘拐・殺害の危険性は消滅したわけではなく,今後も同様の(あるいはさらに劣悪な)事件が起きる可能性は非常に高い。その時こそどうするのか,小泉政権はちゃんとシミュレートしているのだろうか? ここで最善の方策はただ一つ。「テロに屈して」ではなく,「世論に屈して」速やかに自衛隊を撤収することだ。そうすれば国際的にも国内的にも面目と尊厳を保ちながら「勇気ある撤退」として小泉サンも花道を飾れるであろう。今がその最後のチャンスなのだ。スペインもポーランドも市民の声を反映した良識ある選択をしつつある今,日本だけがチキンレースを続ける必要はないのだ。
自衛隊を撤退させればいい。それ以外に取るべき道はありません。ただし、3人が誘拐されたから、その生命を救うために撤退するのではない。
それでは取引になってしまう。
今後、日本に対して何か強い要求を持つ者に対して、日本の民間人を誘拐すれば目的はかなうという前例を与えることになる。
それこそテロに屈することになる。そうではなくて、自衛隊を復興支援という名目のもとに派遣したことが間違いであったことを正式に認め、今のイラクを平和に導くために必要なのは武力ではないことを認め、その上で撤退を速やかに実行する。
言い換えれば、誘拐とは無関係に、政策の転換を内外にはっきり表明する。
池澤の視点は,4月9日放送のNHK教育テレビ「視点・論点」で河崎曾一郎が「NGOの身勝手な行動が自衛隊の任務を疎外している」と言い放った視点と対比してみるとより一層明確になる(註:河崎氏のTVでの発言は現在Webリソースに公開されていないので,ぽた郎の記憶によります。一部表現が異なる可能性があります)。
河崎の論調は単純でわかりやすい。がしかし,単純であるが故に反論も容易だ。河崎の理論は自衛隊に主体が置かれており,この主体をNGOに置き換えると,容易に以下のような言説を生成することが可能である。すなわち,「自衛隊の(世論に反した)身勝手な派遣がNGOの行動を疎外している」と。ある言説を記号論理学的に解体し再構成することは単なる言葉遊びに近いものではあるが,話者の意図(と時にはその愚かさ)を見透かす格好の方法なのだ。
現に河崎の理論をそのまま厳密に適用すると,自衛隊(あるいは他国の軍隊)が存在する地域ではNGOは活動してはいけないことになってしまう。なるほど,理論としては破綻はない。首尾一貫としている。問題はそれが世論に受け入れられるかどうかだ。そういえば,このような一つの立場,一つの価値観にしか立脚しない近視眼的な思考はどこかで見たことがある。・・・そう,ブッシュ政権とネオコンだ。
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