March 26, 2004 | 「死刑執行人サンソン」
ぽた郎の職場の書棚には,文庫本や新書本が何冊か無造作に放りこまれてある。職場でお昼や夜食を食べにひとりで外の店に入ったりするときに持って行くためだ。カモフラージュしている,といわけではないが,本にはそれぞれ同じ書店のカバーがかられており,どれがどれだか見分けがつかない。食事に出る際にあわててそのうちの一つをランダムに手にとり,ポケットに忍ばせる,というのがいつものパターン。たいていは食事が出てくるまでの極めて短い時間の読書なので,なかなか読み進まない。昨日あれを取っては,今日これを読む。あれ?この前はどこまで読んだっけ?という感じで,どれもちょっとづつつまみ食い状態。本を選ぶのも近くの本屋で瞬間的に衝動的に買うものばかり。ジャンルも傾向もまったくバラバラ。ま,しかしそれはそれで手持ちぶたさの掌を慰めるには充分なのかもしれない。で,本日,手に取った本はこれ。
■安達正勝:「死刑執行人サンソン」,集英社新書 (2003)
副題に「国王ルイ16世を処刑した男」とある通り,フランス革命史の裏面史である。フランス革命に関する著作は学生時代から結構あれこれ読んできたが(きっかけはご多分に漏れず「ベルサイユのバラ」です。ハイ。(^^; ),この本の白眉は旧体制でも革命派でもなく,支配階級でも非支配階級でもない特殊な職業からの視点に立ってフランス革命を読み直していることにある。「死刑執行人」という特殊な(かつアンダーグラウンドな)立場だからこそ,怒濤の革命期のパースペクティヴを怜悧に超然と描くことに成功していると言えるだろう。その点ではシャルル=アンリ・サンソンの自伝自身の教養の高さと先進的な思想に追うところが大きい。しかし,ベースはサンソンの自伝に則りながら,著者自身もさまざまな裏面史的なエピソードを盛り込み,かつ軽快な文章でぐいぐいと読ませる。非常にスリリングで含蓄の深い読み物だった。
と,非常に好感の持てる読み物であるが,ひとつだけ問題点が。著者の筆が非常に絶妙でぐいぐいと読ませるのだるが,その熱意を反映してか,描写が異様にリアルなのだ。如何にそれまで残酷な処刑が行われていたか・・・(リアルな描写),如何にギロチンというものが医学的人道的な見地から開発されたか・・・(リアルな描写),人道的考案にも関わらず,如何にギロチンというものが大量処刑の道具と成り果てたか・・・(リアルな描写),と延々と続くのだ。うーん,これは食事前に読む本ではないよな〜・・・と思いながら途中で断念し,本をパタンと閉じると,真っ赤なトマトソースのパスタが,目の前にコトリと置かれた。