March 25, 2004 | シニフィアンとシニフィエ

自転車仲間のblogでにわかにblogのauthor論が盛り上がっているので,トラックバックの実験を兼ねて(大変失礼!),議論に参加することにする。

blog(あるいは般的なWebリソース)にauthor(あるいは署名,文責名)がありや,なしや? ということだが,結論かうと,ぽた郎としては,どっちでもよいと思う。いや,投げやりな保留的意見ではなく,どっちでもおもしろい,という積極肯定的見解ではあるが。

author とblog本文の関係はソシュールの記号論でいう,「シニフィアン」と「シニフィエ」の関係に似ている。つまり,「意味するもの」と「意味されるもの」。あるいは「記号形態」と「概念内容」。
例えば,ぽた郎という記号(シーニュ)は,「ぽ・た・ろ・う」という記号形態(シニフィアン)と「ああ,あのいつも真っ黒なヒゲのおっさんね・・・。」とか「ああ,あの軟弱者ね。」とかいう概念内容(シニフィエ)の二つの要素に分けられる。ネット上で普段ぽた郎とやりとりしている人やオフ会で会ったことのある人ならば,「ぽた郎」というシーニュが意味するところの「本人」や「ネット人格」(すなわちこれがシニフィエ)がある程度わかるが,はじめてこのページにやって来る人は「ぽ・た・ろ・う」というシニフィアンからはシニフィエが容易に連想できないので,シーニュとしての「ぽた郎」が何を意味するのか(どんな人なのか)わからない。逆に誰かがまったくの偶然で同じハンドル名を使い日記を書いたとすると,「ぽ・た・ろ・う」というシニフィアンから連想されるシニフィエ(この場合は,言い回しとか主張とか)がいつもと違うぞと,読み手は混乱する。
このように,普段,直接対面で会う対人関係と違い,ネット社会上ではシニフィアンとシニフィエは容易に乖離しやすい。シニフィアンとシニフィエの誤った(安易な)結合によって,誤解や先入観も生まれやすい。そういったちょっと特殊な空間が作り出されていると言えよう。

「blogにauthorがありや,なしや?」という議論は,まさにこのシニフィアンとシニフィエの乖離(および不完全な結合)が問題にされているのだと,ぽた郎は分析している。この理論から言うと,@nak(あ)氏の「サイトの書き手の自己(サイト)紹介はそのサイト・書き手のことを知るために必要なんじゃないかと私は思う」という主張は,シニフィアンとシニフィエの乖離によるコミュニケーションの阻害を危惧している立場であると考えられる。また,おのひろき氏のように「書き手の名前が必要だとも思わないです」という意見は,シニフィアンという恣意的なフィルターを介さずに,シニフィエが真に「意味されるもの」として理解されることを期待する立場であると言えよう。
同様に,たけもと氏の「簡単なプロファイルくらい置いてくれた方が、情報を読み取るためのフィルタを構築する助けになる」という見解はまさにシニフィアンの効果的側面を端的に表したものであるし,こぐ氏の「・・・というくらいの自己紹介なら、日記本文を読んだほうがよくわかりそうです」という言説はシニフィアンを通しての歪んだ視線を危惧しているとも言えなくない。

ボードリヤールの広告論を持ち出すまでもなく,我々の取り巻く(特に資本主義的商業主義的)環境は,このシニフィアンとシニフィエの乖離と結合が間断なく繰り返されるダイナミックな空間にほかならない。シニフィアンとシニフィエは完全に一致するものではなく,話者や視聴者によってその「意味するもの」と「意味されるもの」は微妙なズレを生じざるを得ない。それこそがコミュニケーションでなのだ。故に,我々はコミュニケーションに苦しみ,愉しみ,喜び,怒り,それを繰り返しながら成長し,生活していくしかないのだ。ネット上では,それがさらに加速し,先鋭化しているのかもしれない。

最後に,ぽた郎自身の見解。「おもしろければどっちでもよいです。(^^)」 発言者(シニフィアン)がわかるからこそ楽しめる読める記事(シニフィエ)もあるし,非常にうまい共感の持てる記事(シニフィエ)なら,発言者の名前や趣味などと行った妙な先入観(シニフィアン)がない方が面白い場合もある。要するに面白いものは面白い,面白くないものには興味は無い,というある意味残酷なスタンスです(笑)。いずれにせよ,blog(そして全てのWebリソース)は,良い意味でも悪い意味でも,消費されつづける「記号」に過ぎないのだ。

追記

ちなみにこれは単に記号論のパロディーだからマジメに読まないでね! (^^;  

 ところで,引用とトラックバックのお作法ってこんなんであってます?

たけもとさんちへのトラックバックがエラーが起こっちゃってどーしてもできません。なして?
http://southofheaven.info/nucleus/action.php?action=plugin&name=TrackBack&tb_id=155

それに,「はてな」へはそもそもトラックバックってできないの〜っ?

コメントの一覧 (10件)

ぽた郎さん、Trackback成功です!
確かに結局のところ「おもしろければどっちでもいいです!」ね。でもおのさんが言うように、blogによりに個人中心のコンテンツが増えてくると、シニフィエが連想できないことによって「おもしろいはずのものがおもしろくない」こともあるのかなと。まぁ書き手がそれでいいもというのであればいいんですけどね。(^^)
p.s.祝Movabletype導入!

................. by @nak(あ) (03/25 08:50)

こぐさんが喜びそうな話ですね。忙しいのかな?
あれ、ping打てませんか? (あ)氏からのものは受け付けているので、MTからは打てないって事は無いと思いますが......。

................. by 竹本昌之 (03/25 09:27)

(あ)さん,竹本さん,いらっしゃいまし〜。
竹本さんちへのTBは職場からもやっぱりダメでした。なんでや? 今度OSとブラウザを変えてチャレンジしてみます。
ところで@nak.comの「RSSのdescription」で書かれてたモンダイって,ズバリ,ウチのことですね・・・。(^^; おのひろきさんとこのトラックバック見て,「しまった」と思ったが後の祭り。お恥ずかし〜。・・・して,字数を制限してRDFに吐き出すにはどうすればよいのでしょう? まだまだMT勉強中のぽた郎でした。(ゆえに,この日記もまだオープン戦状態なのです。開幕は遠い。)

................. by ぽた郎 (03/25 18:07)

竹本さんのご期待どおり喜んでるこぐです。
さて、今宵より「はてな日記」にtrackback sender のような機能がついたようです。
今、実験させていただきましたが、うまく行ってないみたい、なんでー?
それと、要約を記入する欄がもとからついてない。
私の接する狭い世間では、トラックバックに要約文をつけてない例のほうが多いような気がします。

................. by こぐ (03/25 18:36)

トラックバック、時間差でできてました。
やはり冒頭から一定字数を引用しちゃうんですね。

................. by こぐ (03/25 18:38)

やはりWinXP+Netscape7.1でもだめでした。>竹本さんとこへのTB
ログを見ると,「failed: HTTP error: 500 short write」と出てました。これはどういう意味でしょう・・・? うえーん。

................. by ぽた郎 (03/26 00:06)

パロディーを自在無碍に使えるのは相当読み込んでますね(笑)。我が恩師の丹生谷貴志氏を彷彿とさせるリズム感の良さ。実は皆様インテリ揃い!?

................. by Qyou@トラックバックが何かよくわかってない (03/26 17:40)

なんと,Qyouさん,丹生谷貴志先生のお弟子さんであられましたか。いいな〜,サイン欲しい〜っ! (・・・てワタシはミーハー?) あ,ちなみに欲しいのはQyouさんのサインぢゃないですよ。(^^)

................. by ぽた郎 (03/26 19:43)

大学で二つほど授業でてただけっす(爆)。本よりも講義のほうがずっと面白かったよ~。かつては東の浅田、西の丹生谷と呼ばれてたとか。今では浅田氏も関西の人だったっけ?

................. by Qyou (03/27 00:02)

大学はハーレーダビッドソンで通い、腰にはいつも熊のプーさんのアクセサリーをつけていた丹生谷先生(笑)。

................. by Qyou (03/27 00:04)
トラックバックの一覧 
こりゃまた思わぬところに記号学の大家がいらっしゃいました。 話者と言説をそれぞれシニフィアンとシニフィエに類比させるとは大胆なる新説? シニフィアンとシニフィエの相関は恣意的であるというのがそ ......
................. from 方法の記憶 in こぐ日記 ( 03/25 18:19)
恥ずかしながら、岡本太郎の書いたものをこれまで読んだことがなかった。近所の書店に
................. from 岡本太郎『今日の芸術』(知恵の森文庫) in 1/365*morio0101 ( 03/27 00:26)